長野県の上田市と坂城町にまたがる葛尾山と五里ヶ峰。この2つの山を結ぶ縦走ルートは、歴史のロマンを感じられる山城の跡から、北アルプスを見渡せる素晴らしい尾根歩きまで、1日でまったく違う2つの表情を楽しめる魅力的なコースです。

しかし、里山ならではの急な斜面や滑りやすい足元など、事前に知っておくべきポイントもあります。今回は、この特徴的なルートを安全に、そして無理なく楽しむための実践的な歩き方やコツを分かりやすく解説します。

前半の厳しい急坂と後半の穏やかな尾根道という特徴を知り、足元の滑り対策と効率的な休憩を取り入れることで、初心者でも安心して絶景を楽しめます。
乾燥した細かい砂や枯葉によるスリップを防ぐため、靴の角を立てずに足の裏全体を地面にペタッとつける「フラット着地」を意識します。下り坂では歩幅をいつもの半分に小さくして歩きましょう。
前半に続く急勾配では、かつての山城の防衛設備だった「三ノ郭」や「二ノ郭」などの平らな場所(テラス)を休憩スポットにします。ザックは下ろさずに1-2分ほど呼吸を整えるだけで、体力をしっかり温存できます。
登山口となる坂城神社の駐車場は週末に満車になりやすいため、しなの鉄道の坂城駅周辺に車を停めて電車と徒歩を組み合わせるルートが便利です。満車のストレスなく、スムーズに登山を始められます。
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軍事要塞-絶景尾根へと劇的に変化する地形が魅力

この縦走ルートの最大の魅力であり、同時にしっかりと準備しておきたい特徴が、前半と後半で山の姿がガラリと変わる二極的な地形の特性です。登り始めのハードなエリアと、その後に広がる爽快なエリアのギャップが、多くの登山者を惹きつけています。
| 区間 | 標高範囲 | 主な地形と特徴 | 体感環境と魅力 |
|---|---|---|---|
| 葛尾山(前半) | 440m – 805m | 岩場、乾燥した砂礫、城郭の堀切や急登 | 坂城盆地を見下ろす歴史ロマンとスリル |
| 五里ヶ峰(後半) | 805m – 1,094m | 幅広で緩やかな土の尾根道、作業道 | 山頂の冷涼な西風と北アルプスの大絶景 |
前半の葛尾城跡はスリルあふれる戦国遺構が連続
歩き始めて最初に向かう葛尾山は、戦国時代に地域を治めていた村上氏の拠点「葛尾城跡」があった場所です。そのため、敵の侵入を防ぐために作られた人工的な急斜面や、ゴツゴツと露出した岩場、深く掘り込まれた「堀切」などの防御遺構が次々と現れます。乾燥した砂礫の急坂が続くため緊張感がありますが、かつての武将たちと同じ目線で眼下の千曲川や坂城町の盆地を見下ろすことができ、歴史のロマンに浸れる知的な興奮を味わえます。飯綱山の岩場などに達した瞬間に、それまでの静かな松林から一転して、麓の坂城駅に滑り込む列車のブレーキ音やしなの鉄道の走行音がクリアに響いてくるのも、町と山が地続きであることを実感できるこのルートならではの面白い感覚です。
後半の五里ヶ峰は北アルプスを望む快適ハイク
過酷な前半の山城エリアを乗り越えると、景色と道が一変します。五里ヶ峰へと続く主稜線は、幅が広くて緩やかな土の尾根道となっており、とても歩きやすい快適なハイキングコースです。周囲を遮る木々がパッと消える五里ヶ峰の山頂に到着すると、ひんやりとした心地よい西風が吹き抜け、ミニチュアのように整然とした千曲市街地と、青空に鋭く突き刺さる白い北アルプスの大パノラマが目に飛び込んできます。前半の疲れが一気に吹き飛ぶような、日帰り登山としての最高の爽快感を感じられる瞬間です。
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フラット着地と城跡テラスの休憩で体力を温存する

このルート特有のダイナミックな地形変化を安全にクリアするためには、現場の状況に合わせた具体的な歩行技術と、スマートな休憩の取り方が鍵になります。
乾燥砂礫の滑走は足裏全体のフラット着地で防ぐ
葛尾城跡への近道や、五里ヶ峰からの下り斜面では、「細かく乾燥した砂」とその上に積もった「松葉や枯葉」という、非常に滑りやすい足元コンディションに直面します。この乾燥した微粒子は、一歩踏み出すごとに靴の裏でベアリングのように転がるため、普通に歩くと足が後ろへ滑ってしまい、余計な筋力を使って疲れてしまいます。
ここを安全に通過するための核心的なコツは、靴底のエッジ(角)を立てて地面を蹴るのではなく、足の裏全体の面積を地面にフラットに着地させる「フラットフッティング(フラット着地)」です。自分の重心を常に踏み出した足の真上に置くように意識してください。特に下り坂では、膝を軽く曲げて歩幅を通常の半分に縮め、一歩ずつグリップを確認してから逆の足を進めるステップワークを徹底することで、不意のスリップ転倒をしっかりと防ぐことができます。
山城の郭跡テラスで心拍数を安全圏に落として休む

前半の葛尾城跡への登りは、敵の体力を奪うために設計された人工的な急斜面が連続するため、どうしても心拍数が上がりやすくなります。ここでバテずに後半の縦走路へ体力を温存するスマートな方法が、中世の山城構造を応用した休憩法です。
ルート上には「三ノ郭」や「二ノ郭」、「姫城跡」といった、かつての防衛拠点だった平らな場所(テラス)がいくつも存在します。急な斜面を九十九折に登るときは一定の呼吸を保つことに集中し、これらの平坦地に到着するたびに小さな休憩を挟みましょう。このとき、ザックはわざわざ下ろさず、水分を補給したり歴史の解説板を眺めたりする「1-2分程度」の短い時間で十分です。これだけで心拍数が安全圏まで下がり、五里ヶ峰へと続く後半の長い尾根歩きに向けて体力を効率よく残すことができます。
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山城の跡って、登る側からすると本当に厳しい急坂が続くんだよね。でも、かつての武将たちが作った平らな「郭(くるわ)」の跡を休憩場所に使うと、驚くほど楽に登れるようになるんだ。足の裏全体をペタッとつける歩き方と合わせて、ぜひ試してみてね。僕も遠くの山を調べるときは、こういう現地の地形の個性をロジカルに読み解くのが一番の楽しみなんだよ。
微気象の残雪と劣化した木製階段は三点支持で防ぐ
この縦走ルートを安全に歩き通すためには、自然の気象変化やルート上に設置された人工物の状態にも目を配る必要があります。里山だからと油断せず、現地の状況に合わせた具体的な対策を知っておきましょう。
標高差700mの寒暖差には重ね着とスパイクを準備

登山口となる坂城神社の標高は約440mですが、目指す五里ヶ峰の山頂は1,094mと、その標高差は約700mに及びます 。そのため、春先などは麓で汗ばむほどの陽気であっても、山頂付近や日陰になる回り込みの道(トラバース道)に入ると、ひざ下まで雪が残っていたり、カチカチに凍結していたりすることがよくあります 。
麓の暖かさのまま薄着で登ってしまうと、冷たい強風や残雪で体が急激に冷やされてしまうため、重ね着(レイヤリング)の準備が欠かせません 。汗を素早く乾かすインナーの上に、風を防ぐウインドブレーカーやフリースなどをザックの取り出しやすい場所に用意しておきましょう 。また、チェーンスパイクやアイゼンを必ずザックに入れておき、登山道に雪や氷が現れたら、迷わずその場で装着することが大切です 。
腐食した木製階段は端のフレームを踏んで三点支持
葛尾山から五里ヶ峰へと続く縦走路には、かつての山城の特徴である深い「堀切」を越えるための木製階段がいくつか設置されています 。しかし、これらの中には水分を含んで木が腐食し、踏むとバキッと抜けてしまう危険があるステップも混ざっています 。
こうした古い階段を安全に乗り越える裏ワザは、ステップの真ん中を踏むのを避け、左右にある頑丈な柱(フレーム)に近い「端の部分」に足を乗せることです 。さらに、手すり自体も古くなっている可能性を考えて全体重を預けるのはやめ、周囲のしっかりした立ち木や手すりに軽く手を添えながら、常に体と手足の三箇所で支える「三点支持」を意識して慎重に進みましょう 。
満車ストレスを避けるしなの鉄道のループ移動が快適

低山登山で意外と見落としがちなのが、登山口の駐車場トラブルです。この山域を快適に巡るために、移動の工夫を取り入れてみましょう。
坂城神社の駐車場混雑は駅デポの電車併用で解決する
ルートの起点となる坂城神社には登山者用の駐車場がありますが、ここは地元の方々が利用するパターゴルフ場の駐車場としても使われています 。そのため、天気の良い週末の午前中には早い時間で満車になってしまうことが多く、また入口が少し分かりにくいために現地で迷ってしまう車も少なくありません 。
この満車リスクと時間のロスをきれいに解消できるのが、しなの鉄道を利用した「鉄道ループ型」の周回プランです 。まず車を坂城駅の周辺にある駐車場に預けておき(デポ)、駅から歩いて五一尾根の末端(蹄ヶ崎)から山に取り付きます 。そこから五里ヶ峰・葛尾山へと縦走し、最終的に坂城神社へと下山して、そこから徒歩で坂城駅まで戻って車を回収するルートです 。この方法を使えば、朝一番の駐車場探しのストレスから完全に解放され、スムーズに山歩きを楽しめます 。
マツタケ保護区の境界線を守り登山届で安全を高める

この山域には、里山ならではの地域の大切なルールや、公的に定められた安全のための決まりごとがあります。これらをしっかりと守ることも、楽しい山歩きを完遂するための大切なステップです。
秋の立入禁止テープを意識して休憩は公共スペースで
この山域、特に下山時に通る急坂ルートや、五里ヶ峰から一重山へ向かう尾根道の周辺は、非常に価値の高い「マツタケの収穫制限地」に指定されています 。そのため、特に秋のシーズンになると、登山道から一歩でも外に入り込まないよう、赤いプラスチックのテープや「立入禁止」の警告看板が道の脇にたくさん設置されます 。
こうした場所では休憩できるスペースが限られるため、道端でうっかり腰を下ろしてトラブルになるのを防ぐ必要があります 。山に入る前の計画段階で、休憩は必ず「葛尾城の郭跡」や「五里ヶ峰の山頂」といった、完全に開けた公共のスペースで行うように時間を割り振っておきましょう 。歩いている最中は「絶対に登山道から外れない」という意識を持つことが大切です 。
信州山のグレーディングを確認して登山届を出す
長野県が公表している「信州山のグレーディング」において、この五里ヶ峰や葛尾山のルートは、一歩間違えると滑落や転落につながる急斜面や岩場、老朽化した階段などがあるため、「しっかりとした登山装備と一定の技術」が必要な山域に位置づけられています 。また、長野県では指定された登山道を通る際、事前の「登山計画書(登山届)」の提出が条例で義務づけられています 。万が一のトラブルの際に素早い救助体制をとってもらうためにも、必ず事前に提出の手続きを済ませておきましょう 。スマホから簡単に登録できるポータルサイトを利用するのが便利です 。

他県の山へ出かけるときは、その土地ならではのルールや気象のクセを事前に調べておくことが本当に大切なんだ。マツタケの保護区も地元の皆さんにとって大切な場所だから、僕たちハイカーがマナーを守って気持ちよく歩かせてもらいたいよね。事前の登山届もしっかり出して、スマートで格好いい山歩きを心がけようね!
歴史ロマンと北アルプスの大パノラマを楽しもう

前半は戦国の歴史を感じる険しい山城の跡、後半はさえぎるもののない大パノラマと、里山とは思えないほどの濃密な体験がギュッと詰まった素晴らしい縦走ルートです 。乾燥した砂での歩き方や、古い階段での足の置き方など、ちょっとしたコツを意識するだけで、体への負担やスリップのリスクは大幅に減らすことができます 。
もし途中で足腰に強い痛みが出たり、急な体調の異変を感じたりしたときは、決して無理をせず、ペースを落とすか早めに引き返す判断をしてください。万が一、痛みが引かない場合などは無理に自己判断せず、専門医に相談することも大切です。下山後も健康で笑顔のままでいることこそが、登山の本当の成功ですからね。
自分の体力やペースにしっかりと寄り添いながら、千曲川の流れと白い北アルプスの絶景に出会う贅沢な時間を、ぜひ安全に満喫してきてくださいね。応援しています!







